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1-2 ハドソン川の奇跡

  次は、エアフロリダ90便の事例とは全く対照的な事例を紹介しましょう。この事例は世界中のメディアに多く取り上げられ賞賛の嵐に包まれた、いわば近年にない「明るい話題」の一つとなったものです。わずか3分20秒という短いドラマの中から、人間というものの底力をきっと見出すことができるはずです。  

1-2-1 USエアウェイズ1549便

  ラガーディア空港はニューヨークのマンハッタン中心部から北東に15キロメートルほどのところに位置する、国内線専用の小さめな空港である。ラガーディア空港の南南東およそ20キロメートルちょっとのところにはジョン・F・ケネディ(JFK)空港があり、国際線の大きな飛行機はほとんどこのJFKか、もしくは西側ニュージャージー州のニューアーク空港を使用するため、日本からの旅行者がこのラガーディア空港を利用することはめったにないかもしれない。

  2009年1月15日午後、USエアウェイズ1549便はすでに出発準備を終え、滑走路手前で離陸の順番を待っていた。1549便はラガーディア発ノースカロライナ州シャーロット・ダグラス国際空港経由で、ワシントン州シアトル・タコマ国際空港に向かう国内線である。左席の機長席に座っているのはチェズレイ・サレンバーガー機長、右席にはジェフリー・B・スカイルズ副操縦士、そしてコックピット後方の客室には3人の客室乗務員と150名の乗客が搭乗して、離陸の許可を今や遅しと待っていた。

USエアウェイズのA320
USエアウェイズのA320

  コックピットの2名は当日の午前中にペンシルベニア州のピッツバーグ空港を出発した後、一旦彼らの所属基地であるシャーロット空港に戻り、その後あらためてラガーディア空港往復の便に乗務して、今回の3泊4日のパターンを終了する予定であった。  つまりこの便は彼らにとって一連の乗務パターンの最後のフライトになるわけであり、今回が初めての顔合わせであった二人ではあるが、これまでの4日間ですっかり打ち解け、そしてお互いに十分な信頼感を抱けるようになっていた。

  というわけでUSエアウェイズ1549便は午後3時25分、副操縦士のスカイルズの操縦でラガーディア空港を何事もなく離陸することができた。  離陸後飛行機は北に向かって上昇を続け、やがてフラップ(離陸時に必要な揚力を得るために、主翼の前縁および後縁からせり出される補助揚力装置)の引き込みも完了し、あとはその時点で暫定的に管制官から許可された高度、15,000フィートまで上昇すればいいだけだ。

  サレンバーガーがふっと息を抜いた瞬間それは起こった。突然飛行機の直前に大きな鳥の群れが出現したのだ。その時点で機の速度は200ノット(時速約370キロメートル)を超えている。鳥は大きいとはいえ眼前に広がる大空の中ではほとんどただの点でしかない。たとえ相手が大型のジェット旅客機だとしても、肉眼で発見するには10マイル(10海里:約19キロメートル)以内に近付かないと難しい。それもその方角に目を凝らしていればの話だ。もちろん近年になってほとんどの飛行機に装備されるようになったTCAS(Traffic Collision Avoidance System:空中衝突防止装置)は、概ね50キロメートル以内の他の飛行機の存在をパイロットに教えてくれ、接近の可能性がある場合には衝突コースからの離脱を指示してくれる。しかし相手が鳥ではこの心強いシステムも機能してはくれないのだ。

「鳥だ!」
「うわっ!」
  ドン!、ゴツン!という鈍い音と振動がコックピットに伝わってきた。
「くそっ!」

  スカイルズは飛行機の姿勢を保つために必死に操縦スティックを握りしめている。サレンバーガーは飛行計器にも注意を払いながら、素早くエンジン計器類に目を走らせた。両エンジンの回転計が無情にもゆっくりとその値を下げていくのが目に入る。もちろんエンジンからコックピットに伝わってくる振動もまた、ただ事ならぬ事態に陥っていることを明確に示していた。おまけにエンジンに吸い込まれた鳥の残骸が燃焼室の中まで到達し、そこから取り込まれた高温高圧のブリードエア(抽出空気:機内の与圧や空調に使用される)を使用したエアコンの吹き出し口からは、異様なにおいが吐き出されている。

  最初の衝撃からわずか数秒後には、二人は自分たちがとんでもないトラブルに巻き込まれたことを確信していた。飛行機とその搭乗者全員の命を預かる生命線とでもいうべき2基のエンジンが両方とも破壊され、その鼓動を止めてしまったのだ。

1-2-2 緊急事態発生

  緊急事態が発生した時にまずパイロットが取る行動は何か。それは飛行機の操縦を継続すること、つまり機の姿勢や速度などを自分のコントロール下に置いておくことである。これをパイロット達は「フライファースト(FLY First)」と言い慣わしている。これなくしてはその後の処置も取れないわけで当然と言えば当然なのだが、パイロットとはいえ突発的な緊急事態によって慌ててしまうと、肝心なフライトコントロールを忘れて状況把握や処置を優先してしまい、さらに状況を悪くしてしまうこともないわけではない。

  サレンバーガーの口からほとんど反射的に「アイハブコントロール(I have control)!」という言葉が発せられ、瞬時にスカイルズも「ユーハブコントロール(You have control)!」と応じる。これは二人のパイロットのうちどちらが飛行機をコントロールしているのかを明確にするために二人の間で交わされる決まり文句であり、これによって飛行機の操縦が疎かになることを防ぐ目的がある。つまりこの時点で飛行機の操縦は副操縦士から機長に間違いなく引き継がれた、ということなのだ。

  機の姿勢や速度がとりあえず安定していることを確認したサレンバーガーは、直ちにスカイルズに対し、緊急時用チェックリスト(QRH:Quick Refference Handbook)の該当ページを開いて読み上げるように指示を出しながらも、あらためて正確な状況把握を試みることにした。
  ENG2(右翼のエンジン)はその計器指示すら表示されておらず、完全に作動を停止したようだ。ENG1(左翼のエンジン)は損傷の具合が少しましらしく、ウィンドミル(風車効果)によってわずかながら回転は続いている。それにしても飛行機を空中に留まらせるためのエネルギーは完全に失われてしまっていることは明らかだ。ただ非常用電源と油圧装置はなんとか機体をコントロールするだけの余力を残している。それだけが救いだった。

  スカイルズが分厚いQRHの中から該当ページを捜し出している間、サレンバーガーが次にしたことは地上の管制官にこの緊急事態を伝えることだった。

「メーデー、メーデー、メーデー(MAYDAY、MAYDAY、MAYDAY)!」
  このメーデーというのは遭難状況に陥った飛行機が発する緊急無線符丁で、これを三回繰り返すことで管制官に緊急事態を知らせ、他の飛行機は緊急通信を邪魔しないように黙らなければならない決まりになっている。

15時27分36秒  「こちらはカクタス1549、バードストライクで両方のエンジンがフェイルした。ラガーディアに戻りたい」
15時27分42秒  「ラガーディアに戻る、了解した。220度に左旋回してくれ」
15時27分46秒「了解。ヘディング220」

  ちなみにこの「カクタス」というのは、USエアウェイズの便の無線呼出し符号として使われているコールサインであり、無線通信の混乱を防ぐために各航空会社ごとに決められているものである。

   当然のことながら、緊急状態に陥った飛行機が戻ってくるということになれば、他の離発着機すべてを止めなければならない。離陸寸前の飛行機には離陸中止を指示し、着陸寸前の飛行機はそのまま着陸させ、少し離れた飛行機は進入コースから離脱させて旋回待機を命じることになる。もちろん万が一のために近隣の飛行場にも連絡を入れなければならない。
  管制官は関係各部署への連絡調整を急ぐとともに、1594便との交信を続けていた。1549便が直面している危機を、この時点で管制官が完全に理解するのは多分不可能だっただろう。しかしなんとか1549便に援助の手を差し伸べ、安全に着陸できる「どこか」へ誘導しようと奮闘していた様子がうかがえる無線交信が、飛行機のCVR(コックピットボイスレコーダー)に残されている。以下がその内容だ。

28分05秒  (管)「カクタス1549ラガーディアのランウェイ13に着陸するか」
     11秒  (サ)「無理だ。もしかするとハドソンに向かうかもしれない」
     31秒  (管)「オーケー、カクタス1549ランウェイ13のレフトトラフィックに誘導する」
     34秒  (サ)「無理だ」     36秒  (管)「わかった。じゃあどうしたいんだ」
     46秒  (管)「ランウェイ4でも大丈夫だがどうする」
     50秒  (サ)「どっちのランウェイにも届きそうにない。どこか右の方、ニュージャージーの方でどこかないか。テターボローか?」
     58秒  (管)「そうだ、右がテターボロー空港だ」29分02秒  (管)「テターボローに行くか?」
     03秒  (サ)「やってみよう」
     21秒  (管)「カクタス1549、280度に右旋回してくれ。テターボローのランウェイ01に誘導する」
     25秒  (サ)「できない」
     26秒  (管)「オーケー、どっちのランウェイがいいんだ?」
     28秒  (サ)「ハドソン川に向かう」
     33秒  (管)「すまないがもう一回言ってくれないか」
     51秒  (管)「カクタス1549、今レーダーから消えている。ニューアーク空港はそちらの右斜め前方7マイルだ」
30分22秒  (管)「カクタス1549、もしニューアークのランウェイ29に行けるなら右斜め前方7マイルだが」

  なんとなくとぎれとぎれの交信のようだが、よく時刻の進み具合を見てほしい。この状況でこれだけ交信ができたこと自体驚嘆に値することなのだ。この間サレンバーガー機長の頭の中ではどれだけ様々な思考が渦巻いていたことだろうか。
  なにしろまったくエンジンが作動していない巨大な物体をなんとか滑空させることだけでも大変な作業なのだ。というより全てのエンジンが停止してしまった旅客機を滑空させるというのは、マニュアル上可能であるということは知ってはいても、実際にやってみたことのあるパイロットなどまずいないのだ。もちろん訓練でも試してみることはない。危険過ぎるからだ。
  サレンバーガー機長も少年時代にグライダーを操縦した経験はあったが、このA320型機をグライダーのように飛ばした経験などはもちろんなかった。

1-2-3 コックピットの戦い

  次はコックピット内の二人の会話の内容を見てみよう。場面は1549便が鳥の群れと衝突してからおよそ40秒後、ラガーディアの管制塔に非常事態を通報した直後にスカイルズが緊急時チェックリストを開始するところだ。
  この緊急時チェックリストとは、飛行機が通常以外の状態に陥った時に不具合部分を修復したり、あるいは不具合を抱えたままでも何とか飛行を継続するための方法が書かれたマニュアルである。普通は副操縦士が項目を読み上げ、機長がそれに応える形で進められる。この場合は「全発動機不作動」という名前のチェックリストが使用されており、その内容は機体電源や操縦系統の作動を確保しながら、エンジンの再始動を試みるというものだ。ただしすべてを記載すると長くなるので、一部分省略させていただく。
 
27分50秒     (ス)「燃料が残っていれば、エンジンモードセレクターをイグニッション」(エンジン操作モードを“点火”モードにする)
     54秒     (サ)「イグニッション」(“点火”モードにしてくれ)
     55秒     (ス)「スラストレバーアイドル」(エンジン出力レバーをアイドル位置に戻す)
     58秒     (サ)「アイドル」(アイドル位置にした)
28分02秒     (ス)「リライト(再点火:再始動)可能速度300ノット、そんなに出せないですね」
     05秒     (サ)「出せない」
     14秒     (ス)「非常電源手動でオン」
     21秒     (ス)「ATC(管制塔)に通報、トランスポンダー(航空交通管制用自動応答装置)7700(遭難状態にあることを表す応答コード)」
     45秒     (ス)「FAC(操縦系統自動制御コンピューター)オフ、ゼンオン」(一旦オフにしてから再びオンにする)
     37秒     (サ)「(管制官は)戻ってランウェイ13におろしたいらしい」
29分00秒     (ス)「30秒経過、両エンジン再始動しません」
     11秒     (サ)「こちら機長、ブレースフォーインパクト(Brace for impact:衝撃に備えよ)!」(機内放送)
     21秒     (ス)「ナンバー1、もう一度やってみますか」
     26秒     (サ)「やってくれ」
     36秒     (ス)「オンに戻します」
     44秒     (ス)「やっぱりだめです」
     48秒     (ス)「フラップ出しますか」
30分01秒     (ス)「フラップ出ました」
     03秒     (ス)「250フィート」(高度)
     06秒     (ス)「170ノット」(速度)
     09秒     (ス)「どちらも出力なし、もう一つの方を試します」
     11秒     (サ)「やってくれ」
     16秒     (ス)「150ノット」(速度) 
    17秒     (サ)「フラップ2、もっと下げますか」
     19秒     (ス)「いや、2でいい」
     21秒     (サ)「まだ何かあるかい」
     23秒     (ス)「ありません」
     38秒     (サ)「身構えろ!」
30分43秒     着水

   緊急時用のチェックリストは、短時間のうちに必要最小限の項目を操作あるいは確認するためのものであるがゆえに、使われている用語や単語もまた最小限に抑えられている。訓練を積んだパイロットたちであれば、ポンポンとピンポン玉のように言葉が飛び交っているうちに、必要な操作が終了してしまうのだ。
  とにかく1549便のコックピットではサレンバーガー機長が全く未知の領域である「滑空」操作を続けながら、そして管制塔との交信を続けながら、もちろんこの先この飛行機と客室にいる150名の乗客の運命を左右する決断を迫られながら、同時進行で副操縦士のスカイルズと共に停止したエンジンをなんとか復活、再始動させる試みを着水直前まで続けていたことがよくお分かりいただけるに違いない。

  ちなみにこの事例の場合、高度およそ3,200フィートから滑空を開始し、ハドソン川の川面に着水するまでおよそ3分20秒の時間が経過している。従ってその間の平均降下率は960ft/min(1分間に960フィートを降下する降下率)であったわけだが、そう聞いても一般の方々にはなかなかピンとは来ないだろうからちょっと例を挙げてみよう。
  皆さんの乗った飛行機が飛行場に着陸する直前、キャビン前方のスクリーンに滑走路らしきものが見え始めた頃、飛行機はほぼ最終進入形態になっている。つまりランディングギヤ(脚)とフラップは所定の位置に下ろされて、あとは着陸するだけといった状態であるが、その時の飛行機の降下率が大体750ft/min前後である。降下率は降下角が一定(通常は3度)ならその速度によって決まるわけだが、ジェット旅客機であれば大体同じような進入速度に設定されているために、ほとんどの飛行機は同じような降下率になるというわけだ。ついでながら滑走路に接地する瞬間の降下率はというと、決まりはないのだが大体100ft/min前後で接地すれば、トンという感じのナイスランディングということになる。
  いずれにしても普段の降下率よりだいぶ大きな降下率で、いわばみるみる内に地面が近づいてくる、そんな圧迫感や焦燥感もあったに違いない中で、やり直しのきかないハドソン川への着水という決断を下したサレンバーガー機長には、ただただ敬意を表するしかない。

救助を待つ乗客たち
救助を待つ乗客たち

  着水した後のことは読者の方々もテレビや新聞のニュースなどでよくご存じのことだろう。1時間近く水面に浮いていた機体の翼上に、機内から脱出した乗客たちが集まって救助を待っているあのシーンだ。あっという間に集結したフェリーボートや救助船によって、1549便の乗員乗客155名は一人の怪我人も出さずに無事生還することができた。

  ところであの短い時間と激烈なプレッシャーの中で完璧な仕事を為し遂げたサレンバーガー機長でさえも、実はキャビンに対しては殆ど何の情報も与える暇はなかったのだ。しかし客室に乗務していた3名のキャビンアテンダントは、鳥衝突の衝撃とエンジンの音が消えたこと、加えて窓外の景色から自分達の飛行機に何が起こり、これから何が起こるのかをただちに把握し、長年の訓練で体に染み込んだ自分達の任務を正確にこなすことによって、乗客たちの安全を守り通したのだった。
  とは言うものの、サレンバーガー機長もまったくキャビンのことを忘れていたわけではない。着水1分30秒前には「ブレースフォーインパクト!」(衝撃防止姿勢をとれ!)とPA(客室アナウンス)を行っている。実はこのアナウンスは着水10秒前にキャビンに対して行うように決められているものであり、本来なら「着水2分前!」というアナウンスをすべきであったのだ。
  しかしすでに眼前にはハドソン川の水面が迫り、一方で副操縦士のリライト(エンジン再始動)操作にも気を配りつつ、推進力を失った機体を繊細なコントロールで姿勢と速度を安定させながら着水に挑もうとしている中で、サレンバーガー機長がキャビンに対して唯一できたことは、通常よりかなり早いタイミングで「ブレースフォーインパクト!」をアナウンスすることだったのだ。
  実際のところこの状況では最後の10秒の間にアナウンスをする暇があると考える方が無理というものだ。ましてや客室乗務員たちは正確な情報は持っていないはずだ。少々早めにこの最終アナウンスをすることによって、客室乗務員たちに迫りくる状況を分かってもらうと同時に、心の準備をする時間を与えようというのが、彼の狙いだったに違いない。

1-2-4 人間の底力

  もちろんUSエアウェイズ1549便の事故に関しては、幸運と言っていい要素がいくつもあったことは事実である。例えばバードストライクが起こった時間が昼間であり天候も良好であったこと。機長席側である左側にハドソン川があったことで、着水の決断を下しやすかったであろうこと。そして更にハドソン川にはほとんど橋がなく、ちょうどその時間に川を横断していた船舶がいなかったこと。着水後も多数のフェリーボートなどが一斉に救助に駆けつけることができたことなどが、この事故における死傷者がゼロであったことに貢献したことは間違いのないところである。そして、何といってもこの便の乗客たちにとっての最大の幸運は、サレンバーガー機長がコックピットの機長席に座っていたことであろう。

  それにしても、ストレスに弱くプレッシャーがかかればすぐに破綻する、それが人間なんだ!という言い方がすっかり定説となってしまった昨今、サレンバーガー機長の冷静沈着かつ的確な判断と行動が世界中から賞賛を浴びることになったのは当然のことであろう。
  しかしサレンバーガー機長は自分はヒーローではないと述べている。
  もちろんサレンバーガー機長の偉業に異を唱えるつもりは毛頭ないが、パイロットの目からこの事例を見ると、一般の方々とは少し違う見方があるかもしれない。それは、「パイロットなら誰でもほとんど同じような判断に至り、やり方や出来具合は少々違っても大体同じような結果になるんじゃないかな」というものだ。

  そう、実はこれが本書のテーマであるところのパイロットの「落ちない力」であり、「人間の底力」の話なのである。
  この3分20秒という短い時間に1549便のクルーに襲いかかった危機は、常人の想像を絶するものであることは間違いない。しかし普段からパイロットたちに常に課せられている使命と、それを乗り越えるために常時行っている努力とを考え合わせれば、自分でも何とかなるのではないかと思うのはただの思い上がりだろうか。


  次の章からはそんなパイロットたちがどんな訓練を受け、毎日のフライトにどのように立ち向かっているのかについて見てもらうつもりです。そんな中からこの「人間の底力」についてのヒントが見つけてもらえればありがたい限りです。
とにかくパイロットとはいえただの人間です。しかしそんなただの人間でも、 鍛えればサレンバーガー機長のように凄まじい困難を乗り越える力を発揮できるようになれる、ということを知ってもらうのが本書の目的でもあります。

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